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学習会資料 「原子力発電」への補足説明   2019-5-20 

 

この資料において,単に図を貼り付けただけで,一切の説明文がない箇所があります。その場で口頭で説明しようと思ったのですが,これでは参加できない人は聞くことができません。

そこで,簡単な補足説明の文書を作りました。

 

表紙(1ページ目)

これは事故を起こした福島第一原発の航空写真です。事故を起こした原子力建屋はこの図の真ん中より少し上にあります。

右下のほうに一杯あるある丸いものは,汚染水タンクで,ここに発生した汚染水が格納されていますが,その量は増える一方です。

 

2ページ

単に高校の物理の復習なので,読んだらわかります。

 

3ページ

重い原子核は分裂によりエネルギーを発生し,軽い原子核は融合によりエネルギーを発生します。ちょうどその中間になるのは鉄です。太陽は天然の核融合炉ですが,できるのは鉄までです。それ以上重いもの(ウランなど)は星の一生の最後である超新星爆発の際にできたと言われています。

 

核分裂において,一番初めに中性子はどこから来たのかというと,実は初期中性子源があります。自発的核分裂(ほっといても勝手に核分裂して中性子を出す)を起こしやすいカリフォルニウムが使われています。

 

なお核融合を起こすのはなかなか大変なので,水爆ではいったん原爆を爆発させ発生した非常な高温な状態で核融合を起こします。さらに現在の水爆は3F爆弾が多いのですが説明は省略します。この学習会は原水爆をつくるためのものではありませんので。(実はネットで検索したらすぐ見つかります。)

 

4ページ

このページは核反応ではありませんが紛らわしいものについて説明したものです。

水爆と水素爆発を混同したら,めっちゃ恥をかきますのでご注意ください。

 

5ページ

原発にはいろいろな型のものがありますが,日本にあるのは沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉だけです。

軽水とは普通の水です。これを冷却材及び核反応を起こしやすくするための中性子の減速材として使います。軽水は水を構成する分子の中の水素が陽子が1個だけからなるものです。これに対し,水素が陽子と中性子からなる重水素からつくられる水は重水と言います。

さらに3重水素からつくられるトリチウム水があります。福島第一原発で発生した汚染水に含まれます。

 

沸騰水型原子炉では水の系統は1系統だけで,原子炉が発生する熱により水が蒸気になり,その蒸気がタービン回して発電します。

 

加圧水型原子炉では水の系統は2つあり,一次の系統では大きな圧力がかかっているので水は沸騰せず蒸気になりません。一次と二次の冷却水との間では熱の移動はありますが物質の移動はありません。二次の冷却水は沸騰して蒸気になるのですが,タービンを回す蒸気は放射能汚染されてないのでタービンのメンテナンスが容易という利点があります。

 

そこで軽水炉では主流は加圧水型の方になりました。もともとGEから沸騰水型の方を技術導入した東芝は,加圧水型を開発したアメリカのウェスティングハウスを買収しましたがその結果経営危機を招きました。

沸騰水型にせよ加圧水型にせよ,もう原発はすっかり時代遅れになったのです。

 

6ページ

核燃料は多くの燃料棒からなる集合体です。これを下から見たのが下の図です。ここに制御棒を挿入すれば中性子の動きが止まり,核反応は停止します。

 

7ページ

核分裂生成物とは単に放射線を出すだけの核のゴミです。この絵ではプルトニウムは再利用することを前提に別扱いしていますが,これは怪しいのです(後述)。

 

9ページ

これは今の核燃料サイクルの構想図です。再処理施設はトラブル続きで稼働していないのでまだできていません。

(この資料を横向けにして)左のウラン鉱山から掘り出したウランは化学反応および濃縮され,真ん中の下にある原発で使われます。その後再処理工場でプルトニウムをとりだしてMOX燃料(後述)にして再度使用します。

実は日本の再処理工場はまだ稼働していないのでフランスに頼んでやってもらっています。

 

10ページ

これは以前の再処理計画です。大きな違いは高速増殖炉があることです(後述)。これは今の構想ではなくなりました。

 

11ページ

ウラン燃料を使うために作られた一般の軽水炉でMOX燃料(プルトニウムを含む)を使うのがプルサーマル発電ですが,これは危険と指摘されています。

 

日本はすでに多くのプルトニウム(47トンぐらい)を保持していてこれで原発を開発するのではないか,という国際社会からの疑惑を払しょくするために考えられたものです。

なお日本が保有するプルトニウムはプルトニウム240を結構多く含んでいるのであまり性能のいい原爆は作れません(プルトニウム239が多いほうが高性能)。

 

13ページから16ページ

放射線についての話ですが,頑張って読んだら理解できますので頑張って下さい。

 

15ページ

初期放射線源がないのになぜJCO臨界事故が起こったか?これはウラン238の自発核分裂のせいと言われています。ウラン238が自発核分裂する確率はかなり低いのですがたくさんあったらどれかが自発核分裂するのです。

 

時々,テレビなどのニュースで,「人が10分そばにいたらたら死亡する」と言われることがあります。

一時間で48シーベルトの放射線なら6で割ったら10分で8シーベルトだから致死量です。でも10分後にバタッと倒れて死ぬわけではありません。それから病院に運ばれ,実際に死亡するのはその何十日か後です。しかし病院もすでに致死量の放射線を浴びた人は助けようがありません。せいぜいモルヒネを打って痛みを和らげるぐらいのことしかできないのです。

 

17ページ

上の図は原発の発電量,下の図は原発以外も含めた全発電量のうち原発が占める割合です。どんどん減っています。

 

細かく見たら,東アジアで福島原発事故以降も増えてます。これは中国で増設したからです。中国では旧式の石炭火力発電所などによる大気汚染が深刻ですから。でも今の中国は原発以上に再生可能エネルギーに力を入れるようです。

 

22~23ページ

石炭は大昔(数億年前)の植物の化石ですが,現在では植物を分解する微生物がいるので,今後はできません。

再生可能エネルギーと言っても,あまり大規模なものを作るとそのために森林の大規模な伐採が必要で,これは環境破壊なので小規模分散型がいいと思います。また天候の影響を受けるため,他地方と電力を融通しあえる仕組みや蓄電技術が必要でしょう。

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